■1年科総コースセミナー
『現代における能の意義『心』作品を考える』
平成26年1月14日実施 |
映像の紹介
シテ(仕手)は全て上田拓司
1、「養老・水波之伝」 老いを養う山神。人間の速さを越えた位で舞う。神。
2、「経正」 戦で討ち死にをし修羅道に落ちた武将、平経正。男。
3、「杜若・恋の舞」 草木国土悉皆成仏の御法を得て喜ぶ、杜若の花の精。女。
4、「安宅」 源頼朝から攻められ、奥州へ落ち延びようとする源義経一行を、北陸安宅関で智略によって通そうとする武蔵坊弁慶。狂。
5、「雷電」 失意の内に死んだ菅原道真の霊が、京の都へ雷を落とす。鬼
能「安達原」の紹介
拾遺集「みちのくの安達が原の黒塚に鬼こもれりといふはまことか」、大和物語、鬼女伝説を題材にした曲です。 熊野山伏が廻国行脚して、陸奥国安達が原で行き暮れ、あたりの淋しい一軒家で宿を求めます。そこには老女が住んでおり、山伏の求めで糸繰りを見せ、やがて薪を取に山へ出かけます。老女の留守中に閨の中を覗くと、死骸が積み重ねられており、これこそ安達が原の黒塚の鬼の住みかであったと、山伏一行は逃げて行きます。老女は鬼の正体を現し、山伏を食い殺そうとしますが、山伏に祈り伏せられて消え失せます。
能は、人間の逃れることの出来ない四苦八苦「生」「老」「病」「死」「愛別離苦」「怨憎会苦」「求不得苦」「五薀盛苦」を扱っている。
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能について 上田拓司
能は、室町時代にそれまであった、猿楽、田楽などの芸能を、集大成し、現代まで続いている舞台芸術です。
特に、足利3代将軍義満などの庇護の下に、世阿弥などによって貴族的趣向に作り上げられました。
又、江戸時代には、武家の式楽として続くとともに、町人の間でも、稽古事として、教養として広く愛好されました。寺子屋で教えていたのも、読み書きソロバンと、能の詞章である謡であったといいます。
近代、現代においても、その発声法、呼吸法から、健康の為にそして一生楽しむことの可能な趣味として、そして教養として、愛好されてきました。
能には、2つの大きな要素があります。1つは「空間の充実」であり、もう1つは、「心の成長」です。
「空間の充実」とは舞台上の表現の技術であり、能の表現の手法です。「花」「迫力」「美しさ」「静中動あり」「動中静あり」などの言葉であらわされる事です。これは舞台の演者が、稽古によって、一生追い求めてゆきます。
「心の成長」とは、演じる側も、観る側も、その能に触れた人が、人間の逃れることの出来ない真実を感じ、人間の心の内の、いつの時代にあっても、不変であるものについて考えさせられる事によって、物の見方、考え方を深めていくという事です。充実した空間から伝えられる事によって感動し、その感動によって心を成長させてゆくのです。
現代社会において、いろいろな悲惨な事件がおきている中で、「心の教育」について、その重要性が説かれています。又、能はこのたび、ユネスコの「無形遺産」と宣言されました。国際的にも長い間注目されていた舞台芸術です。約650年ほどの間、一度も絶えることなく、人々の心を捉えてきた能に触れる機会を、是非とも持っていただきたいと願っています。 |
◆日 時 |
平成26年1月14日(火)5〜6校時[13:10〜15:00]
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◆対 象 |
科学総合コース1年G組 (男子30名、女子10名) |
◆演 題 |
「現代における能の意義『心』作品を考える」 |
◆場 所 |
視聴覚室 |
◆講師 |
瓦照苑 上田拓司 先生 |
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感想文
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今回のテーマであった「能」について私はあまり深く知りませんでした。中学校の時、社会の授業で少し習ったくらいで、実際に見に行ったこともなければ、どのようなことをしているのかさえよく理解していませんでした。上田先生が私たちに最初に質問されたのは、「能は古いからすばらしいものだと思いますか?」ということでした。私は思わず手をあげてしまいましたが、上田先生はそのような考えの持ち主ではなく、「能は古いから残っているのではなくて、その時代ごとに能を好んでくれる人がいるからこそ、約650年前から現代まで途切れることなく残っているのです。」とおっしゃいました。能をよく知らない私達からみると、能のうわべだけを見て、「古いからいい」と思ってしまいがちだけれど、そうではなくて能の素晴らしい点はもっと違うところにあるのだなあと感じました。能は何かが欠けると、成り立たなくなってしまい、シテ・ワキ・鼓・笛…それぞれが主役となって公演しているのだということを知りました。能の良いところのひとつに、性別に関係なく、老若男女,神,鬼…どんな役でも演じられるという点があります。今日いただいたパンフレットや、講演中に見せていただいたビデオのなかで、上田先生はさまざまな役柄を演じておられすごいなあと思いました。また、2歳のときから舞台に立っておられると聞いたときはとてもびっくりしました。そんなに幼いときから日本の伝統芸能に触れられるというのはそうそうできる経験ではないし、すごく貴重なものなのではないかと思います。次の講演は実技も交えながらしていただくということなので、能に触れることができそうで楽しみです。
能は、本当はそうは思っていないのに逆になってしまう人間の悲しさ、不器用さ、苦しさを表現できるものです。難しい表現だし、能ならではの表現もたくさんあると思います。今日のコースセミナーでは、能について少しでも知れたような気がしました。次回のコースセミナーではより深く理解できたらいいなと思います。
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